高岡
震災以降コンビニエンスストアが社会インフラとして注目されています。何か意識の変化などは生まれたのでしょうか?
中山
基本的なスタンスとしては、「より良い生活を消費者に提供する」という考えであり、それは変わりません。ただ、「より良い生活」というのは千差万別であり、また、日々変化いたします。震災以降の新たなニーズも加わり、いよいよ大変な仕事であると感じています。お客さまのニーズに対応する取り組みは毎日コツコツやらないといけない。そういう覚悟でいます。
秋山
震災以降、インフラとしての役割は高まりましたね。開いていてくれて良かった、電気が点いていて嬉しいとか、短い期間でお店が開いたとか、あるのが当たり前のものがあるというありがたさを日本中の人が感じました。コンビニへの期待、役割は間違いなくワンランクレベルアップしたというのは感じますね。
中山
福島県の川内村の店長がインタビューの中で、復興のお役に立ちたいという想いから、スタッフが楽しく仕事できるように日々工夫しているというお話をされていました。そうすることで、ここで働きたいと思う人が増えれば、その人たちが仕事をしながら生活しようと町に戻ってきてくれるかもしれない。だからできるだけ楽しく仕事しようと。これはいい取り組みだと思いました。心構えが素晴らしいですよね。
秋山
CSRに取り組む一番のポイントは「経営者の本気度」だと思います。経営者が本当にいい仕事をしよう、社会に役立つ仕事をしていこうと思っているかどうかが重要です。それを繰り返し伝え、仕組みを作り、一人ひとりが自分の仕事に落とし込んで考えられるようにする必要があります。これはもう経営者が本気にならないと実現できませんので、やはり経営者の想いが一番重要だと思います。
高岡
先ほど海外展開の話がありましたが、当然国内での店舗数も増やしていく中で、店舗数が増えると社会に与える影響や、環境負荷が増えてきます。CSRの重要性もますます大きくなってくると思います。
中山
小売業にとって、お店に並んでいる商品がどういう履歴でやってきたのかを突き詰めてマネジメントすることは、環境、コンプライアンスも含めたCSRのポイントだと思っています。そして、それがいかに重要で難しい課題であるかということも認識しています。非常に手間とコストが掛かる取り組みですが、これを一般的なコストとしていくことが重要です。そして、そのことを社会全体で受け止めるように変わっていかないと一段上のステージには進めません。まずは、このような活動に各大手企業が率先して取り組むことが重要だと思います。
秋山
そうですね。さらにもう一つ重要なポイントだと思うのが、消費者に対する啓発です。自分たちが消費するということが世界にどういう影響を与えているかを、店頭などで少しずつでも訴えていくとか、そういったことがこれから求められるCSRになっていくのだと思います。
中山社長は就任以来社内イントラネットでメッセージを発信し続けて、社員とのコミュニケーションを大切にされているとうかがいました。その点で素晴らしいと思うのは、社員・新入社員に向けたメッセージで7つの約束と3つのお願いということをおっしゃっています。お願いするだけでなく、まずご自分が7つの約束としてこれをやります、だからみんなもこの3つをやってくださいと、社長ご自身がきちんと発信されて、自らの姿勢で示していこうとされている。このことはファミリーマートの社内に浸透する雰囲気を作り出しているのではないかと感じました。
秋山をね氏(ダイアログより抜粋)
東日本大震災の影響で住み慣れた地元を離れ、今なお30万人以上の人たちが避難生活を余儀なくされる中、川内村はいち早く「帰村宣言」を行い役場や学校など公的機能を再開させました。ファミリーマートは、役場からの要請やお客さまからの熱烈な要望に応え、営業を休止していたコンビニエンスストアを改装し、「村民帰村」事業支援のため出店。店長は、郡山市に避難していましたが、開店に合わせて川内村の自宅に戻り、日々「お客さまの期待を超える」営業を続けています。
「お客さまと会話の絶えないアットホームな雰囲気を大切にしたい」と、故郷で復興の一翼を担うことに決めました。村民の皆さんや復旧・復興に携わる皆さんが、快適にお買い物できる環境づくりのお手伝いを目指していきたいと思います。
ファミリーマート 川内村店 寺岡 奈緒美 店長