あなたと、コンビに、FamilyMart

ステークホルダーダイアログ 2015年度

社会課題の解決をビジネスにつなげるためには、社会条件自体を変える所作も必要。

藤井

もう一つは、社会課題とビジネスチャンスをどうつなげるかです。社会課題をビジネスチャンスに変えていくのはそう簡単なことではありません。社会課題がビジネスになるには、それを解決して誰かがお金を払ってくれないと成り立ちません。それをどうつなげていくかということですが、今までのように、マーケットだけを見ていても、おそらくはそこに解はありません。
例えば風力発電は、環境に良い、技術開発も進んでいる。でも、電気代は石炭火力より何倍も高額です。では、なぜ今、風力発電がビジネスになっているか?それはFIT(フィード・イン・タリフ)※1が入ったからです。つまり、ルールです。FITというルールをつくることで、お金を払ってもらえるようになっていきました。ある意味、社会条件自体を変えるという所作がないとビジネスにはつながらないということです。
欧米のリテーラーは自分たちのレバレッジを使って、社会を変えようとしています。どんな社会であるべきか、強固な信念があって、その信念は、ルールをつくっていくことで、実は半分担保されています。そのルールをつくる姿が、今までのビジネスと社会課題の乖離をブリッジしていく可能性があるという点で、欧米では一般的なビジネストラスティー※2として成り立っています。まさにそこがCSRとビジネスが交流する点です。これは、近い将来、日本もそうなっていくだろうと思います。

※1 FIT(フィード・イン・タリフ): 再生可能エネルギーの固定価格買取制度

※2 ビジネストラスティー: ビジネスの信頼感

企業と消費者が一緒になって取り組まないと解決しない社会課題もある。

高岡

古谷さんは、消費者の視点からどのようにお考えでしょうか?

古谷

これはファミリーマートにだけ言えることではありませんが、「社会課題をきちんととらえているのか」と疑問に思うことがあります。社会課題の解決と言っても、それは利益につながるとらえ方であって、本当に消費者が課題として考えていることをつかんでいるとは思えないことがあります。もちろん企業は利益を上げなければいけないので、そういう発想になるのはやむを得ませんが、それとCSRの観点からの社会課題は違います。本業として消費者が満足する商品やサービスを提供していることとCSRの実践は明確に区別しないといけないと思います。

古谷 由紀子氏

古谷 由紀子氏

北村

CSRの推進にあたっては、その点を踏まえた上で取り組んでいきたいと思います。

古谷

一方で、消費者側の選択にも問題があります。持続可能な社会に向けて、どういう生活をすべきか、どういう社会を築いていったらいいのかということを消費者も考えなければならない状況にあります。でも、消費者は「便利で、簡単で…」という生活を謳歌し、これからもそうしたいわけです。
例えば、コンビニエンスストアの24時間営業。持続可能な社会の観点から、そこに働く人のことを考えると、私たちにそれが本当に必要なのか、あるいは、消費期限にもの凄く敏感な人がいて、お弁当などの廃棄にもつながっていることをどう考えるのかなど、問題はたくさんあります。
だから消費者側にも責任があるということです。しかし、それを企業がどうやって解決していくのかということを合わせて示していかないと、消費者もこれからの社会を描いて、責任ある役割を果たしたいと思っても果たせません。やはり両者が一緒になって、課題を解決していく必要があります。
少子高齢化や女性の社会進出といった、抽象的な社会課題ではなく、ファミリーマートが提供している商品やサービスで、どんな問題が起きているのか、どんな問題を解決していかなければいけないのかを、具体的に掘り下げる必要があると思います。

玉巻

24時間営業については、東日本大震災の時に、「コンビニエンスストアの明かりが防犯にも役立ち、心の救いになった」、「ライフラインになった」というお話をいただきました。その意味でも地域に貢献できると思っております。
また、CSRという視点で申し上げれば、例えば、買物不便地域に対するデリバリーサービスに取り組んでいますが、ラストワンマイル※と言われますように、採算に乗っている事業者は今ほとんどありません。しかし、利益の追求だけでなく、私たちの強みを生かした新しいビジネスモデルの構築をまさに進めているところです。

※ ラストワンマイル: 店舗から消費者へ届ける配送

古谷 由紀子氏

古谷 由紀子氏

新規事業として、医療・介護、ネットビジネス、金融サービスを展開。

高岡

ファミリーマートの強みを活かした「事業を通じた社会的課題解決を生み出す新たな価値」について具体的な事業についてはいかがでしょうか。

玉巻

大きく三つの分野に絞って展開していきます。一つ目は医療・介護、二つ目がネットビジネス、三つ目が金融サービスです。
まず医療・介護ですが、2012年に高齢者向けの宅配弁当を手がける(株)シニアライフクリエイトをグループ会社化しました。当初のシナジーとしては、お弁当と一緒にファミリーマートの商品もお届けできるということでしたが、実際にやってみますと、利用されている皆様に一番喜んでいただいているのは、安否確認や、お届けするスタッフと高齢者の方が会話ができるということです。コミュニケーションを求められているわけです。
今後、医療・介護の部分はますます拡大していきますので、利潤を追求するだけでなく、社会のニーズに応えていくという社会使命という意味で、引き続き取り組んでまいりたいと考えております。
二つ目のネットビジネスですが、スマホを使い、「どこでもファミマ」というテーマで、24時間、必要な時に必要な分、必要なだけお届けできるようなサービスを構築できないか、あるいは、AI(人工知能)を使ってより便利な社会につなげていけないかということを検討しています。
三つ目の金融サービスですが、今は、コンビニエンスストアで公共料金をお支払いいただけたり、ATMで24時間いつでもお金が引き出せる時代です。今後、海外への送金や、外国からのお客さまに利用いただく場面が多くなっていきます。そういった部分で新たな金融のサービスを事業化していきたいと考えております。

玉巻 裕章

玉巻 裕章

高岡

他業態とのコラボレーションにも積極的に取り組んでいますね。

玉巻

病院内店舗や鉄道会社、外食企業、JAとコラボレーションした店舗など、ファミリーマートの強みというよりは、新たなプラットホームを構築していこうと、さまざまなトライアルを行っています。

玉巻 裕章

玉巻 裕章

高齢化社会に対応し「メディカルフーズ」を販売!

高齢化社会が進む中、在宅療養患者数の増加とともに、塩分量やたんぱく量、糖類など食事への配慮が必要になる方が増えると予想されています。2015年12月、糖尿病や腎臓病など食事制限が必要な方向けの食品として、「メディカルフーズ(療養食)」の販売を病院内店舗や病院近隣の店舗で開始しました。
販売に際し、日本栄養士会と東京都栄養士会に賛助会員として加盟。農林水産省が普及・推進に取り組んでいる新しい介護食品「スマイルケア食」のマーク利用の認定を取得しました。
現在、店舗で取り扱っているメディカルフーズは、約180種類。専用売場を設置し、介護食品には「スマイルケア食」を表示しています。現在の取り扱い店舗は14店舗ですが、2017年度には200店舗に拡大していく予定です。

スマイルケア食

写真

他業態とのコラボレーション店舗例

写真

病院内店舗

写真

鉄道会社とのコラボレーション店舗

写真

外食とのコラボレーション店舗

写真

ドラッグストアとのコラボレーション店舗

関連情報

ページトップへ