調達先のグローバル化を進める中、安全・安心な商品の提供はもとより、温室効果ガスや廃棄物の削減、環境汚染の防止、生物多様性の保全、人権の尊重や労働慣行、従業員の安全・健康、さらには物流における人手不足への対応など、ファミリーマート事業を支えるサプライチェーン全体を見渡した多方面への配慮が求められています。また、気候変動に起因すると考えられる自然災害が、年を追うごとに頻発・激甚化する中、有事での事業継続が期待される業態として、日頃から災害に備え耐えうる持続可能な調達および商品供給網を構築し、レジリエンスを強化することも求められています。
ファミリーマートは、「サステナビリティ基本方針」に基づき制定した「サステナビリティ調達原則」と「サプライチェーン・サステナビリティ行動指針」、「ファミリーマート人権方針」のもと、サプライチェーンマネジメントを推進しています。また、農畜水産物仕入先や中食商品、ファミマル(ファミリーマートプライベートブランド)商品の製造委託先、輸入元などのお取引先と協働し、持続可能な社会の実現に向けてサプライチェーン全体でサステナビリティ調達を推進しています。
ファミリーマートではサプライチェーンに対する監査・モニタリングにおいて、品質・衛生管理の視点はもちろん、「人権」「労働」「環境」などCSR視点の9つの項目についても、定期的に実施しています。
2024年度は中食製造委託先全32社に対してセルフチェック(SAQ ※)を実施し、お取引先自身とファミリーマートで現状把握を行いました。さらに、より客観的で厳格な判断を行うため、12工場(※全て下期)で、第三者審査機関の外部監査員によるサプライチェーン監査を実施しました。サプライチェーン監査では、重大な法令違反や緊急是正措置が必要な事案がないことを確認するとともに、是正措置が必要な事案については取引先とともに改善に努めています。
また中食原材料メーカーに対してはジャパンフードサプライ株式会社より、アンケート「サステナビリティ調達、人権に関するご質問」を全209社に配信し、162社から回答があり、その結果を当社にも共有いただきました。また、SAQを5社、サプライチェーン監査を5社に対し実施しました。
今後は、SAQ と監査・モニタリングの対象領域を拡大展開していきます。
※国連グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンのサプライチェーン分科会にて作成された、CSR調達セルフ・アセスメント質問表。人権、労働、環境、公正な企業活動などのサステナビリティに関する項目で構成されています。
ファミリーマートでは、中食商品を中心に多くのオリジナル食品を展開しており、それに必要な農作物や畜産物を安定的に調達することは、企業活動の根幹を支える重要なテーマです。
近年では気候変動や地政学的リスクなど、サプライチェーンに影響を及ぼす環境が続いており、2020年度上期に気候関連のシナリオ分析を実施し、気候変動に起因する干ばつ・水害による農作物・畜産物の収穫や成育に与える影響を検証しました。
この結果を受け、調達先の多国籍化を進めるとともに、植物工場での原材料調達等、安定供給体制の整備を推進しています。
さらに、動物福祉への配慮も重視しており、現在は中食製造用の鶏肉のうち、半数以上が「Genesis G.A.P.認証」を取得した農場から供給されるなど、持続可能な畜産の実現に努めています。
2024年からは、環境への負荷をさらに軽減するため、石油由来プラスチックの削減に向けた取り組みを進めております。
プライベートブランド「ファミマル」では、容器の軽量化や環境配慮型素材の使用推進で、石油系プラスチックの削減を進めています。
加えて、石油系インクの使用を抑えた白色容器を使用して、環境配慮の強化を図っています。
また、食品ロス削減に向けた新たな取り組みとして、2024年2月に一部地域で「野菜のシート ベジート®」を使用した巻寿司を販売しました。
このベジート®は美味しさに問題ないにも関わらず、大きさや形の規格を満たさないという理由で、廃棄されてしまう野菜を原料としています。彩り豊かな見た目と栄養価が特長で、農家支援と食品ロス削減を両立した商品として注目されています。
さらに、水産資源の保全を目的に、ウニやイクラ、カニなどの代替食品を使用した、だいたい(代替)海鮮シリーズ第2弾商品「だいたい(代替)海鮮巻」を2024年5月に発売しました。
TAC制度(※)に基づき漁獲管理されたスケソウダラや、大豆由来の油脂などを活用することで、味や食感を維持しつつ、資源保護にも貢献する製品です。
2023年12月には、持続可能な漁業で知られるアラスカ産天然シーフードを使ったおむすびも発売し、日常に取り入れやすいサステナブルな商品開発を進めています。
今後もファミリーマートは、国際的なサステナビリティ基準や消費者の意識変化に対応しながら、パーム油、コーヒー、遺伝子組換え作物、水産物など幅広い原材料において、環境や社会に配慮した調達体制を強化してまいります。
※TAC制度:対象とする魚種の漁獲できる上限の数量を定め、漁獲量がその数量を上回らないように管理する漁業制度。
ファミリーマートでは、魅力的で価値の高い中食商品を提供することを目的に、中食構造改革を推進してきました。
物流面では物流網も含めた物流センターでの作業工程や、AIを活用した配送シミュレーターを自社開発することで配送ルートを抜本的に見直し、さらに輸配送管理システム(TMS)を活用して物流の高度化を図っています。
物流拠点については、地球温暖化や気候変動が引き起こす様々な事業環境の変化に対応しながら最適化を行っています。例えば、小売業の要である物流網を守るため、台風や水害が発生する可能性を鑑み、物流拠点の検討時にはハザードマップを確認し、浸水リスクの低い土地への建設やリスク回避のための盛り土を行うほか、より堅牢なつくりの物流拠点の整備に努めています。万一、被災により、物流拠点や中食製造拠点の機能停止や道路網の寸断が発生した際には、被災していない近隣の物流拠点からの配送へ一時的に切り替えるほか、おむすびや日用品、飲料水などの緊急時に必要となる可能性の高い商品に絞って優先配送を行うなどの対応を取っています。
また、物流業界が抱える「物流2024年問題※」に対応すべく、荷役時間の削減や運転以外の付帯作業の削減、納品効率の改善などを進めています。
今後も、安定供給はもとより、環境問題や労働安全などの社会課題にも配慮しながら、レジリエントな物流網の構築と実践に努めていきます。
※「物流2024年問題」は、2024年4月1日から「自動車運転業務における時間外労働時間の上限規制」が適用されることで物流業界に生じる様々な問題。