調達先のグローバル化を進める中、安全・安心な商品の提供はもとより、温室効果ガスや廃棄物の削減、環境汚染の防止、生物多様性の保全、人権の尊重や労働慣行、従業員の安全・健康、さらには物流における人手不足への対応など、ファミリーマート事業を支えるサプライチェーン全体を見渡した多方面への配慮が求められています。また、気候変動に起因すると考えられる自然災害が、年を追うごとに頻発・激甚化する中、有事での事業継続が期待される業態として、日頃から災害に備え耐えうる持続可能な調達および商品供給網を構築し、レジリエンスを強化することも求められています。
ファミリーマートは、「サステナビリティ基本方針」に基づき制定した「サステナビリティ調達原則」と「サプライチェーン・サステナビリティ行動指針」、「ファミリーマート人権方針」のもと、サプライチェーンマネジメントを推進しています。また、農畜水産物仕入先や中食商品、ファミマル(ファミリーマートプライベートブランド)商品の製造委託先、輸入元などのお取引先と協働し、持続可能な社会の実現に向けてサプライチェーン全体でサステナビリティ調達を推進しています。
ファミリーマートではサプライチェーンに対する監査・モニタリングにおいて、品質・衛生管理の視点はもちろん、「人権」「労働」「環境」などCSR視点の9つの項目についても、定期的に実施しています。
2023年度は中食製造委託先全32社に対してセルフチェック(SAQ ※)を実施し、お取引先自身とファミリーマートで現状把握を行いました。さらに、より客観的で厳格な判断を行うため、上期5工場、下期15工場の計20工場で、第三者審査機関の外部監査員によるサプライチェーン監査を実施しました。サプライチェーン監査では、重大な法令違反や緊急是正措置が必要な事案がないことを確認するとともに、是正措置が必要な事案については取引先とともに改善に努めています。
また中食原材料メーカーに対してはジャパンフードサプライより、アンケート「サステナビリティ調達、人権に関するご質問」を全200社に配信し、163社から回答があり、その結果を当社にも共有いただきました。また、SAQを2社、サプライチェーン監査を2社に対し実施しました。
今後は、SAQ と監査・モニタリングの対象領域を拡大展開していきます。
※国連グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンのサプライチェーン分科会にて作成された、CSR調達セルフ・アセスメント質問表。人権、労働、環境、公正な企業活動などのサステナビリティに関する項目で構成されています。
ファミリーマートは、中食商品を中心に多くのオリジナル食品を取り扱っており、主原料となる農作物・畜産物を安定的に調達する必要があります。ファミリーマートでは、2020年度上期に気候関連のシナリオ分析を実施し、気候変動に起因する干ばつ・水害による農作物・畜産物の収穫や成育に与える影響を検証しました。従来、調達先を複数の国・地域に分散するほか、野菜の植物工場での調達を拡大することで、気候・気象の変化に左右されない原材料の供給体制を整備してきました。
2022年度はウクライナ危機や急激な円安により、様々な原材料が値上がりしましたが、原材料調達構造の改革により商品価格への転嫁を最低限に抑えました。今後も継続して将来へのリスクに備えたサプライチェーンを構築していきます。
また、現在、中食製造用の鶏肉の半数以上が動物福祉に配慮したGenesis G.A.P. 認証を取得しています。持続可能な漁業の推進としての具体的な取り組みの事例では、持続可能な漁業を実現しているアラスカ産の天然シーフードを使用したおむすび2品を2023年12月に発売し、第2弾で2024年6月には魚総菜2品、日配品3品を発売しました。また、2024年2月に発売した「だいたい(代替)海鮮丼」に続き2024年6月には「だいたい(代替)海鮮巻」を発売しました。ウニの代わりに、TAC制度(※)で漁獲量を管理されたスケソウダラのすり身などを使用し、いくらの代わりに大豆由来の油脂を使用しています。
これからも動物福祉に留まらず、持続可能なパーム油やコーヒー、水産物、遺伝子組み換え食品に関する国際規範や消費行動の変化などの外部環境の変化を、持続可能な調達を脅かすリスクとして認識し、対応を進めていきます。
(※)TAC制度:対象とする魚種の漁獲できる上限の数量を定め、漁獲量がその数量を上回らないように管理する漁業制度。
ファミリーマートでは、魅力的で価値の高い中食商品を提供することを目的に、中食構造改革を推進してきました。
物流面では物流網も含めた物流センターでの作業工程や、AIを活用した配送シミュレーターを自社開発することで配送ルートを抜本的に見直し、さらに輸配送管理システム(TMS)を活用して物流の高度化を図っています。
物流拠点については、地球温暖化や気候変動が引き起こす様々な事業環境の変化に対応しながら最適化を行っています。例えば、小売業の要である物流網を守るため、台風や水害が発生する可能性を鑑み、物流拠点の検討時にはハザードマップを確認し、浸水リスクの低い土地への建設やリスク回避のための盛り土を行うほか、より堅牢なつくりの物流拠点の整備に努めています。万一、被災により、物流拠点や中食製造拠点の機能停止や道路網の寸断が発生した際には、被災していない近隣の物流拠点からの配送へ一時的に切り替えるほか、おむすびや日用品、飲料水などの緊急時に必要となる可能性の高い商品に絞って優先配送を行うなどの対応を取っています。
また、物流業界が抱える「物流2024年問題※」に対応すべく、荷役時間の削減や運転以外の付帯作業の削減、納品効率の改善などを進めています。
今後も、安定供給はもとより、環境問題や労働安全などの社会課題にも配慮しながら、レジリエントな物流網の構築と実践に努めていきます。
※「物流2024年問題」は、2024年4月1日から「自動車運転業務における時間外労働時間の上限規制」が適用されることで物流業界に生じる様々な問題。
九州で販売する調理麺や惣菜を製造している当社では、地元住民の方々はもちろん、外国籍の方々も多く働いています。また、コンビニエンスストア向けの商品製造を行うため、工場は昼夜を問わず稼働をしています。
こうした状況を踏まえ、日々の労務管理は商品の品質管理と並ぶ、経営上の最重要項目であると捉え日々取り組んでいます。
今後も、従業員の皆さんがより一層働きやすい労働環境を整えることで、安全安心な商品供給に活かして参ります。
株式会社九州エヌエフフーズ
代表取締役社長
竹内 功二さん